182日目 父のなかで何かがなくなった。

 ほんの数秒、父も母も君から視線をはずした時だった。
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 「どごんっ!」
 振り返るまでもなく父は音で理解した、君がソファーから落ちた音だと。君は間伐を入れずに泣きはじめる。それを見て取り乱す母。
 「救急に連れて行ってください、今すぐに連れて行ってください」
 「連れて行かない」
 父は直感的に君は大丈夫だと感じた。それよりも父と母の不注意で君に痛い思いをさせてしまったことがショックだった。父は自分の親に不注意で痛い思いをさせられたから、君には絶対に不注意で痛い思いをさせてはならない、と思っていたからだ。君が落ちた音と君の泣き声を聞いて、父の心から何かが欠けてしまった。それは、もう二度とこんなことが起きないようにしよう、と肝に銘じることでは埋めることができない何かだった。
 おでこの左側から落ちたみたいだ、5分くらい泣いていたけど後はどこも傷めていないみたいだし、その後ミルクもいっぱい飲んだ。でも念の為、明日病院に行こう。こんな時、熱さまシートの脳天気なペンギン柄は腹が立つ。

 今日はごめん。
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